海堂尊 コラム

ベストセラー作家・海堂尊さん特別寄稿
〜エビータとチェ〜
2018.04.25

医療ミステリー「チーム・バチスタ」シリーズなどで圧倒的な人気を誇るベストセラー作家・海堂尊(かいどう・たける)さんから、NEWSページ のコメントに続き、ミュージカル『エビータ』に寄せたスペシャル・コメントをいただきました!

海堂さんは現在、『エビータ』の狂言回し的キャラクター「チェ」のモデルとも言うべき、アルゼンチン出身の革命家チェ・ゲバラを主人公とした大長編4部作「ポーラースター」シリーズを執筆中。これまでに、第1作『ポーラスター ゲバラ覚醒』(2016年/文藝春秋刊)、第2作『ゲバラ漂流 ポーラースター』(2017年/文藝春秋刊)が刊行されています。

革命家として有名なゲバラですが、実は医学部を卒業しています。
ともに「医師」という共通項を持つ、海堂さんとゲバラ。取材のため何度も南米各地へ足を運び、さらには膨大な数の文献をリサーチし続けているという海堂さんの目に、ゲバラと同じアルゼンチン出身の同時代人*でありながらまったく異なる生涯を辿ったエビータことエヴァ・ペロンはどのように映るのでしょう──?

*エヴァ・ペロンは1919年生まれ、チェ・ゲバラは1928年生まれ。

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「棺を覆うとき人の真価がわかる」という。その意味でエビータはアルゼンチン国民に最も愛された女性であるという評価は間違いない。

1952年7月26日、南半球の真冬の最中、33歳の若さで彼女は逝った。

彼女に別れを告げようと、喪服姿のガウチョの馬列が地方から粛々と集い、五月広場を埋め尽くした市民が手にした蝋燭の火は氷雨にも消えることなく、いつまでも燃え続けた。このため政府は、3日と予定した告別を7日間に延長せざるをえなかった。

舞台にはキューバ革命の英雄チェ・ゲバラが案内人として登場するが、エビータとゲバラに接点があったという史実はない。だが接点があっても不思議はないと思わせる、精神的な共通点が二人にはある。その辺については拙著『ポーラースター』シリーズをお読みいただきたい。

「エビータ」は大の親日家でもあった。戦後、困窮していた日本にいち早く援助物資を送るよう進言したのも彼女だと言われている。軍国主義に反対し、市民の自由と幸せを願ったエビータの壮絶な人生を描いた大作が今の日本で演じられることには、シンクロニシティと大いなる意味がある。このミュージカルが多くの人々の心に届くことを願う。

──海堂 尊(医師・作家)


[PROFILE]
1961年千葉県生まれ。
外科医、病理医を経て、現在は放射線医学総合研究所・放射線医学病院研究協力員。
2006年、「チーム・バチスタの栄光」で第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し作家デビュー。同シリーズは多数映像化され、累計1千万部を超える。また、キューバ革命の英雄チェ・ゲバラの生涯を描く「ポーラースター」シリーズを執筆中で、週刊文春にて「ポーラースター外伝フィデル!」を連載中。最新作は『玉村警部補の巡礼』(宝島社)、『死因不明社会2018』(講談社)。


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エビータとチェ。

19世紀半ばの南米と世界を舞台に激動の生涯を送った二人の人物に心惹かれた方は、7月のミュージカル『エビータ』来日公演を待つあいだにぜひ、海堂さんの「ポーラースター」シリーズを手に取ってみてください! 


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